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「共感の功罪」『孤独と共感――脳科学で知る心の世界』別冊日経サイエンスの感想。

評価

 

非常に良い

 

感想

 

共感とは、一般的に「他者の感情を共有すること」を指すそうです。

 

確かに、広辞苑を引いてみると、以下のように出てきました。

(sympathyの訳語)他人の体験する感情や心的状態、あるいは人の主張などを、自分も全く同じように感じたり理解したりすること。同感。 

一方で、認知脳科学では、上記のような「情動的共感」の他にも、「認知的共感」や「共感的配慮(同情)」と言った3つを共感の要素としているそうです。

 

 「認知的共感」とは、他者の感情について考え、理解する能力、いわゆる「心の理論」のことだと述べられています[L.デンワース、2018:p6]。

 

また、「共感的配慮」とは、他者の苦しみに対して何とかしようという意欲を高めることだそうです[L.デンワース、2018:p6]。

 

 

つまり、共感とは、単なる感情の共有ではなくて、総合的なものなのだと(笑)。

 

興味深いですよね。

ついつい、僕は、相手の感情を共有することだけに目を向けてばかりでした。つまり、本質的に理解するための能力や何とかしてあげようという思いなど、自分の能力に対しては無頓着でした。とんだ迷惑ですよね(笑)。やさしさの押し売りをしていたわけですから。

 

閑話休題

 

また、興味深いのは、共感には偏りがあることです。

 

共感という感情や思考が進化したのは、家族や集団における関係を強めるためだったそうです。つまり、コミュニティを維持するためや発展させるための能力だったのですね。

 

一方で、共感には、負の側面があるそうです。

例えば、

ストレスや苦痛を経験している人に共感すると、その共感そのものが苦痛になる[L.デンワース、2018:p9]。

 

なるほど、確かに自分よりも悪い状況や最悪な経験をした人につねに共感していたとしたら、自分の気分も鬱になりますよね(笑)。

 

だから、共感の負のリスクが強い職業の人たちには、自殺する人が多いそうです。

本文では、医者や警察官が挙げられています。

医者や警察官などは他者の苦しみに常にさらさており、個人的苦痛が強すぎると仕事の妨げになる。例えば、医師は極端な燃え尽き症候群に悩まされることが多く、他の人よりも自殺リスクが高い[L.デンワース、2018:p10]。

 

うーん。

感覚的には理解できます。

確かにそうなのかもしれないですが、具体的な数値が載っていないので、そのように断定できるのか疑問です。例えば、具体的な疫学調査とか統計はないのでしょうか?

 

⇒ググったら、厚生労働省の統計調査があるみたいですね。

www.mhlw.go.jp

 

例えば、平成29年の職業別の自殺者を見てみると、確かに他の職種に比べると高いみたいですね。医療・保健従事者を見ると、1.51%も占めていますね。

f:id:yktmmrmtoosa03:20190312191859j:plain

平成29年における職業別自殺者の状況。厚生労働省「自殺の統計:各年の状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/jisatsu/jisatsu_year.htmlから引用。

 

 

また、興味深いのは、プラス思考と共感についてです。

ザキ、ドウェック(スタンフォード大学の心理学者)やシューマンスタンフォード大学)らの研究(2014)で、努力すれば共感レベルが変化すると考える人は、共感の不変の特質だと考える人よりも、自分が属していない社会集団の人の立場で考えようとしていたそうです。

 

つまり、「当人が属している集団の規範が人助けをしようという人々の気持ちを引き出すこと」を明らかにしたというのです。

 

なるほど、相手を理解しようとする意志と信頼関係の構築をして、かつその上で、ある程度の規律を設けることで、集団間の対立が克服できるのかもしれないということですね。

 

おわりに

 

共感って奥深いですね(笑)。

 

 ・Lydia Denworth 2018「共感の功罪」『孤独と共感――脳科学で知る心の世界』別冊日経サイエンス pp6-11