迷走ブログ

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無意識のうちに陥ってしまう思考や行動ーー無意識の意思決定、ステレオタイプ脅威、アインシュテルング効果

はじめに

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僕たちは、しばしば無意識のうちになにかを選択しています。

 

例えば、ショッピングでなにを買うのか、選挙で誰に投票するのか。

 

そういったことが、実は無意識のうちに様々な要素によって左右されています。

 

などと決めつけると、以下の反論がありそうですね。

 

「いや、私は意識的に物事を取捨選択しています」

 

と。確かに、選択したのは、自分自身かもしれません。しかし、実のところ、僕たちが意識して選択したのではなく、無意識の心の動きによることが最近の研究で明らかになってきています[バージ、2014]。

 

今回は、そのように人が無意識のうちに陥ってしまう心の動きについておもしろい研究が載っている「意識と感覚の脳科学  別冊日経サイエンス 201」の感想をお伝えします。

 

 

 

無意識の意思決定

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無意識の思考

 

普段、僕たちは、何を買い、どこへ出かけるのかといった無数の決定を行いますよね。

 

例えば、どこの喫茶店に入るのか。そこで何を注文するのか。

 

そのような意思が実は、意識的に考える前に決定を下しているということがあるそうです[バージ、2014:p28]。

 

意思決定に関する研究は、フロイトにまで遡ります。

フロイトは、本能的な欲求を「イド」、それをコントロールする「自我」と分けました。

 

そして、フロイトは、意識は合理的な思考と感情からなり、無意識は非合理的な思考や感情からなると見なしているそうです[バージ、2014:p28]。

 

しかし、現在の認知心理学では、そのような二極化した考えは否定されているそうです。

 

確かに、そうですよね。

対立関係だけでなく、補完関係として、相互作用していると考えるほうが納得いきます。

なぜならば、無意識の行動が非合理的な思考や感情からのみ生じるのならば、どうして僕たちは日常生活でたくさんの情報から無数の決定を下しているのかわかりませんよね。

 

例えば、横断歩道を渡っていて、バスが近づいてきたらとっさに避けますよね。

 

視界にバスが入ってきたら、そのバスの速度や速さ、どのくらいで自分のところへ突っ込んできそうか、距離はどのくらい離れているのか、とっさに判断しますよね。

 

このように、無数の要因によって、無意識の内に避けるあるいは避けないという判断をするわけです。だからこそ、無意識が、非合理的な思考や感情から生じるとは考えづらいですよね。

 

ステレオタイプ

このように日常生活では、無意識のうちに認識しているが、反射的に反応してしまうことがあるというのです[バージ、2014:p30]。

 

 

例えば、相手の第一印象を抱く時です。

面接や商談で知らず知らずのうちに、相手の年齢や性別、人種などでどのように振る舞うのか、無意識のうちに決定することがあるそうです[バージ、2014:p30]。

 

ただし、無意識の影響が常に、僕たちの行動に影響しているわけではないそうです[バージ、2014:p33]。

 

それを示すサブリミナル広告の事例があります。

 

スクリーンの映像に「ポップコーンを食べよう」という言葉を観客に気づかれないよう瞬時に挟み込むことによって売店での売り上げが伸びると、かつては考えられていた[バージ、2014:p33]。

 

なるほど、興味深いですよね。

普通は、広告に影響されてしまい、ついついポップコーンを買ってしまいそうな気がします。

しかし、実際はそうではないそうです。

 

ただし、なんらかの行動(例えば、お腹が空いていて、その空腹感をなくそうとする)をとることがすでに動機付けられていたら、サブリミナル広告もその効果が有効な場合もあるそうです[バージ、2014:p33]。

 

確かに、前提条件として、喉が渇いていたら、飲料水の広告を見て、飲料水を買うかもしれません。またお腹が空いていたら、スナック菓子の広告を見て、お菓子を買うかもしれません。

 

このように、動機付けがあったら、広告の影響を受けることの可能性も納得できます。

 

それでは、動機付け自体を喚起させる方法はないのでしょうか。

気になります。

 

身体化された認知とは?

 

物理的な行動や感覚は、それらに比喩的に関連づけられる心理状態を引き起こす[バージ、2014:p34]。

 

何をいっているのでしょうか。

 

例えば、

ある日、過去に友人を強く非難したり、理不尽に強く怒鳴ってしまったという出来事を思い出したとします。すると、そのような悪い過去の行為を埋め合わせるように、他人に親しくしたり、助けたりと言った、願望が生じてくるそうです[バージ、2014:p34]。

 

他にも、人が自身の微笑むしかめ面といった顔の表情から、無意識のうちに、視界内のある対象物について、好き嫌いといった価値判断を下しているという、シュトラックという研究者の研究もあるそうです[バージ、2014:p34]。

 

加えて、他にも、

熱いコーヒーカップをしばらく持っていた人は、冷たいアイスコーヒーのグラスを持っていた時よりも、他人について「より温かく」、より好意的にで、より寛大な印象を抱いた[バージ、2014:p34]。

という実験もあるそうです。

 

興味深いのは、物理的な「温かい」「冷たい」と言った感覚が、相手の人への印象へのバイアスになり得るということです。

 

つまり、ある意味、自分の印象を操作できますよね。

 

例えば、意中の相手に自分は「あたたかく」思いやりのある人間であるとアピール際に、あたたかい飲み物を差し出したりと言った小癪な?手段も取ることができるわけですよね。

 

まとめ

人は、無意識の思考によって、意思決定をしていることがある。

ただし、すべての行動に影響を与えているわけでない。

ところが、その影響は大きい。

例えば、なにかを買う、選挙で誰に投票するのかといったことなど。

相手の表情や自分の表情、などとい言った「身体化された認知」によって、判断していることがある。

 

 

ステレオタイプ脅威

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「ステレオタイプ脅威」という言葉は、もしも失敗したら、自分の属する社会集団に対する否定的な固定観念が強められてしまい、精神的に重い負担になっていることだそうです[ヤン、2014:p38]。

 

主に人種の問題と関わっているそうです。

例えば、「ステレオタイプ脅威」によって、学校の成績、スポーツ、などにおいて社会的不平等や学業、スポーツの成績などにおいて差を生んでいるというのです。

 

ただし、そのような要因には、さまざまなものがあると言えますので、なんとも言えませんよね。例えば、家庭環境だとか。

 

そのような「ステレオタイプ脅威」を払拭する方法があるそうです。

 

実際の学校で行われた研究では、自信を強める作文を書く1時間足らずの課題など比較的簡単な訓練によって、長期期間続く、大きな効果が生まれ、学業成績の差が縮まり、教室と生徒の心からステレオタイプ脅威を払拭できた[ヤン、2014:p37]

 

 

おもしろいですよね。

自信を強める作文を書くことで、否定的な固定観念が緩和させるというのですから。

 

 

 

なじみ深い考え方に固執してしまうということーーアインシュテルング効果

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しばしば、僕たちは、一つの解法にこだわってしまうことがあります。

 

例えば、いつも同じ通勤・通学路を使いますよね。

でも、実はそれが最も最短距離ではないかもしれません。例えば、近頃のダイヤ改正などによって、さらに効率的に目的地へと行けるようになっているかもしれません。

 

上記の例は、極端な例かもしれません。

 

例えば、受験生の場合。

数学の問題をといている時、一つの解法にこだわってしまい、エレガントな解法があるという可能性を無意識のうちに排除していることもあるかもしれません。

 

このように、日常生活において、僕たちは最初に思い浮かんだ解法に固執しまって、なかなか別の解法を試そうとしないということは往々にしてありますよね。

 

そのような無意識のうちになじみ深い考え方に固執してしまうことで、別の解法を無視してしまうことを「アインシュテルング効果」というそうです[ビラリッチ他、2014:p.43]。

 

つまり、人は、知らず知らずのうちに視野が狭くなっている可能性があります。

 

そのように定石が邪魔になってしまうことで、あやまった判断を下してしまうことが、チェスの事例で証明されています。

 

ビラリッチらの研究によると、チェスのプレイヤーが定石にとらわれ、ほかによりよい有効な指し手となりうるマス目があるのにもかかわらず、そのマス目が目に入らなくなってしまっていることが、視線を追跡した結果、明らかにされたそうです[ビラリッチ他、2014:p44]。

 

 

また、非常に興味深いのは、

 

自分がすでに抱いている結論や仮説と一致しないデータは、無視されるか捨てられてしまう[ビラリッチ他、2014:p45]。

 

ということです。

 

まさに、このようなバイアスに自分が気づかないうちに、とらわれている可能性があるというのです。つまり、整合性、辻褄を合わせるために、自分にとって不都合な事実から目をそらす。

 

危ないですよね。

 

それではそのようなアインシュテルング効果に対処するにはどのようにすれば良いのでしょうか。

 

ビラリッチらは以下のように述べています。

これは、チェスであれ科学研究であれ医療診断であれ、その分野に熟達すればするほど認知的バイアスの影響を受けにくくなることをうかがわせる[ビラリッチ他、2014:p47]。

 

なるほど。

その分野に精通すればするほど、判断を誤ることは少なくなると。

確かに、何かを知れば知るほど、その判断がその分野で通用するかどうかは、なんとなく次の予想がつきそうですよね。

そのためには、勉強しなくちゃいけませんね。

 

ただし、完全に影響を受けないということはないそうです。

 

アインシュタルング効果に影響されやすいということを意識的に覚えておくのが、もう一つの対策となる[ビラリッチ他、2014:p47]。

 

 

結局は、勉強して価値判断のための材料を蓄えて、それでも判断を間違えてしまうこともあるということを肝に銘じておくしかないと。

 

 

 

おわりに

 

僕たちの行動や思考が無意識のうちに、決定されてしまう可能性があります。

 

僕も出来るだけバイアスを取り除いて価値判断をしたいものです。

 

 

「意識と感覚の脳科学 別冊日経サイエンス 201」には他にも興味深い研究が載っています。ぜひ一度確認してみてください。

 

 

 

参考文献

J.A.バージ、2014、「意思決定の心理学」、『意識と感覚の脳科学  別冊日経サイエンス  201』、p28−35

E.ヤン、2014、「ステレオタイプ脅威」、『意識と感覚の脳科学   別冊日経サイエンス 201』、p36−40

M.ビラリッチ、P.マクラウド、2014、「アインシュテルング効果ーー良案が排除されるわけ」、『意識と感覚の脳科学   別冊日経サイエンス  201』、p43−47

 

 

 

意識と感覚の脳科学 (別冊日経サイエンス)

意識と感覚の脳科学 (別冊日経サイエンス)