評価
よい
先行研究を通して、孤独が精神的身体的に影響することについてわかりやすく解説しています。
感想
近年、孤独感と病気の関連性について研究されているらしいのです。
例えば、孤独感がうつ状態や認知力の低下などを引き起こすなど、精神疾患や身体的疾患に関連しているとされているそうです。
本文では、ブルガムヤング大学の心理学者ホルト=ランスタッドらの研究など多数の先行研究が取り上げられています。
結論として、孤立感、社会的孤立、一人暮らしは、身体的・精神的な衰えと関連性があると示されています。
つまり、孤独と健康問題との関連性があると。
具体的には、どのように関連しているのか。
孤独感とは?
そもそも孤独とは、どのような状況なのでしょうか。
一般的には、孤独とは、
社会から孤立しているとの認識及び他者から切り離される経験[F.ルッソ、2018:p.60]
と定義されるそうです。
また、「慢性的な孤独」と定義する場合もあるそうです。
その場合、状況の変化に関係なく、長期的に孤独を感じ続けていることを示すそうです。
彼らが感じているものはうつ状態や社交不安、内気さとは違うが、これらは慢性的な孤独感と重なっていることが多い[F.ルッソ、2018:p.60]。
うーん......
よくわからないです。
うつ病とは違う状態のでしょうか?
どのような関係性にあるのでしょう?
包含関係にあるのか、ないのか。
また、筆者は、キール大学の心理学者ローデンバーグの研究を取り上げています。
その研究によると、慢性的な孤独感を持つ人は、社会的脅威に過剰に警戒心を持ち、精神的問題、うつ状態を示すそうです。
そのような孤独を感じる原因として、社会的孤立が取り上げられています。
つまり、交友関係がなく、近所付き合いもなく、コミュニティにも参加していないような人のことですね。
評価方法が複数ある
そのような研究は、どのようにして孤独感を評価しているのでしょうか。
科学文献の問題の1つは、孤独感を評価する標準ツールが複数あり、必ずしも同じものを測っているわけではないことだ[F.ルッソ、2018:p.60]。
えっと、評価方法が複数あるそうです(笑)。
つまり、人間関係の量や質を定量化する方法が、確立されていないと。
まあ、たしかにそうですよね。
アンケート調査で、自分の感情をどのように評価するかは、自分自身の置かれている状況によって異なりますよね。例えば、ある人が、学生のころに感じる孤独と高齢者の場合では違った評価方法が必要でしょうから。うまく説明できないですが……
孤独は進化上必要な役割がある?
そして、僕が非常に興味深いと感じたのは、孤独が生物の進化において役割があるとする研究があるそうです。
筆者は、シカゴ大学のジョン・カシオポの研究を取り上げています。
孤独感は、他人とつながりを持ちたいという気持ち(親和動機)を抱かせ、社会的な脅威に警戒心を抱かせ、身体的なストレスを高めるように神経を変化させるそうです。
なるほど、生きていく上で必要なものだと。
興味深いですね。
若者と高齢者の孤独の違い
筆者は、ルーベン・カトリック大学のバンハルストの研究を紹介しています。それによると、若者が、慢性的孤独になる場合、社会的状況を否定的に解釈しがちであり、孤独感から抜け出せないそうです。
つまり、自分の振る舞いや行動結果を過小評価しがちであると。
また、人への信頼感が低いという傾向があるそうです。筆者はローテンバーグらの2010年の調査を参照しています。それによると、人への信頼が失われた場合、時間が経過すると孤独感が強まるそうです。
一度でも、子供の頃に人から信頼を裏切られたら、その後人間不信に陥る可能性があると(笑)。親しくしていた友達に裏切られたら、そりゃあトラウマにもなりそうですよね……
一方で、高齢者の孤独感は、生活の変化と関連があるそうです。
例えば、パートーナーを失うことや健康が損なわれることなどの変化が挙げられています[F.ルッソ、2018:p.63]。
現在の孤独研究
現在の研究動向は、どのようにして孤独をやわらげることが可能かを研究されているそうです。
例えば、孤独を感じている人にどのようにして介入するのか。
認知行動療法が多いそうです。
認知行動療法とは、
自分の経験に対する否定的な解釈を打ち消したり、別の角度で捉え直したりするための一種のトークセラピーだ[F.ルッソ、2018:p.63]。
なるほど。
なんか、あやしい洗脳系の自己啓発の講座と似ていますね(笑)。
もちろん、認知行動療法は、科学的なものだとおもいますが……
おわりに
孤独が身体的に精神的に関連していることをはじめて知りました。
また、孤独をやわらげるために認知行動療法を取り入れられていることも知りました。
参考文献
・F.ルッソ 2018 「孤独の科学」『孤独と共感 脳科学で知る心の世界』p.p.59-64 別冊日経サイエンス