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【読書感想】青春小説の金字塔『友情』の感想。

はじめに

武者小路実篤の『友情』を読みました。

青春小説なので、学生のうちに読んでおこうと思いこの本を手にしました。

高校生の頃に1度読んだのですが、もう一度読み直そうと思い棚から引っ張り出しました。

こんな人にお勧め

  • 青春時代を思い出したい人
  • 甘酸っぱくほろ苦い思いをしたい人

 

評価

読みやすいです。

 

感想的なもの

まず、この作品は、主人公野島と親友大宮と友人の妹の杉子という3人の友情や恋愛を描いた作品となります。

そう、皆さん大好きな三角関係の恋愛ものです。そのため、友達を取るか愛する人を選択するのか、というような登場人物たちの葛藤とドロドロ?な人間模様が面白いです(笑)。

 

小説の読み方について

ナボコフは著作『ナボコフの文学講義 上 (河出文庫)』にて「小説の読み方で最悪なのは、小説の人物を実在の人物であるかのように心得て、彼らと付き合う、そういう子供じみた幼稚な読み方である」と述べています。

 

もちろん、ナブコフが指摘するように、できるだけ客観的に登場人物を捉えて、本を読み解いていくのが理想的なのでしょう。しかし、僕は、この本の人物に関して、ナボコフの注意する読み方で捉えてしまいました。

 

やはり、主題、登場人物の役割、象徴性などを読み取るための読書は、すぐには身に着かないですね。

 

主人公の頭がお花畑ではないか

前置きが長くなりましたが、本の感想を単刀直入に言います。

主人公野島の杉子への想いが一方的で自己中心的で未熟に感じました。言い換えると、頭の中がお花畑なのではないかとさえ疑ってしまいました(笑)。

 

大前提として、人は社会的な存在であり、様々な状況や場面や立場でペルソナを使い分けていると思います。学校の先生は先生らしく振る舞ったり、逆に生徒は生徒らしく振る舞うなど、自分の置かれた立場や状況に即して、自身の役割を演じ分けるはずです。

 

主人公野島は、終始、杉子に対して一つの理想的な女性としか見なしていないです。

 

杉子は美しく、聡明であるという側面しか捉えていません。それに加えて、杉子から愛してもらえるかどうかという不安が希薄であり、どこまでいっても野島は独りよがりな妄想しかしていないです(笑)。

 

主人公の愚かさと友人の聡明さの対比

この本の主題である「友情」は、主人公野島の「幼稚さ」と親友大宮の「大人らしさ」というある意味で、大宮にとっての人格的に社会的に優位性を引き出す結果として、成り立っていると感じました。

 

例えば、野島は杉子にアプローチすることを大宮の相談ありきでアプローチの方針を決めようとします。あるいは、大宮を通して、杉子に近づこうとしています。つまり、野島と杉子の間には、必ず大宮がいます。

 

そのため、大宮は野島をコントロールする監督的な役割ができてしまうはずであり、どこまで行っても立場的に杉子に容易に近づけることができる優位な位置に常にいると感じました。

 

また、野島は「相談する側」で大宮は「相談される側」であり、ここでも大宮の心理的優位性が存在します。

 

そして、野島は劇の脚本を酷評されており、作家としての大宮は評価されているので、大宮は社会的な優位性を有しているわけです。

 

このように、野島が常に下位、大宮が常に上位にいるというような構図を感じました。

 

今にして思えば、野島の結末は、バットエンド直行しそうな雰囲気が初めからあったわけですが、読み終えるまで全然気がつきませんでした(笑)。

 

おわりに

この本の教訓としては、友情も恋愛も一方的な関係にならないように気を付けようと思いました。

 

おそらく、最近流行りの漫画とかだったら、最後は主人公野島に隠された魅力的な何かが開花することで、ヒロインである杉子が野島を選ぶというあらすじになりそうだなと感じました(笑)。