はじめに
業界、業種はどうであれ、顧客対応時において、クライアントに何かを(口頭で)説明しなければならない時があると思います。
そのような時、クライアントに「理解(納得、満足)してもらうには」どうすれば良いのでしょうか。
特に、伝えるべきことを多少端折ってでも話すべきか(「分かりやすさ」を取るべきか)、それとも根気強く厳密な言葉遣いをするべきか(専門用語、定義、業界の慣習等を「正しく」伝えるべきか)という場面と遭遇すると思います。
今回は、口頭でクライアントに説明する時に、心がけていることを中心に僕なりの考えを述べます。
もしも新入社員さんの中で、「何度も説明しているのに、お客さんに理解してもらえない」という課題を抱えている方がいらっしゃれば、参考にして頂ければ幸いです。
こんな人におすすめ
- 新卒でお客さんと接することが苦手な人
- お客さんへ伝わる説明方法を模索している人
- 専門用語を相手に伝えることに苦労している人
- はじめに
- 結論:基本的には「クライアントにとっての満足(納得)感」を追求するべきであり、必ずしも「厳密性」は要らない
- 汲み取り、伝えるべきことを整理することについて
- 相手に合わせる
- 「正しさ」を取るべき場合
- 「分かりやすさ」を取るべき場合
- 補足1:感情的な(或いは知識レベルが乖離する)人に対して、「厳密性」を取る場合について
- 補足2:話し方(聞き方)の「型」を身に付けることは重要。工夫することも大切
- おわりに
結論:基本的には「クライアントにとっての満足(納得)感」を追求するべきであり、必ずしも「厳密性」は要らない
ありきたりかもしれませんが、お客さんは「ドリル」がほしいのではなく、「穴」がほしい、という話ですね(そのような話でしたよね……?)。
話者からすると「厳密性」や「分かりやすさ」を考えてしまいがちですが、結局、クライアントからすると話者の話し方や過程(論理)は(どうでも良いとは言いませんが)それほど重要ではないことの方が多いと思います。
したがって、クライアントからの要求(期待、疑問)に対して回答すればよく、「専門用語」を正しく説明しなければならない、というわけではありません(当たり前ですが、はじめに書きました)。
そのため、相手に100%の理解を求めるのではなく、あくまでも相手に満足してもらうことが重要です。
汲み取り、伝えるべきことを整理することについて
大まかな方針
クライアントに対して話すべきこと(=伝えなければならないこと)は、どのような内容でしょうか。まずはそれを考え(汲み取り)、その疑問(期待、要求)に対して、伝えるべきことを過不足なく答えることをおすすめします(いや、当たり前でしょ、と思うかもしれませんが、お付き合い下さいませ)。
例えば、クライアントから「いつまでに調査報告書もらえるの?」という質問をもらったとします。
当然ですが、上記の質問に対する回答は「〇〇月△△日にお渡しいたします」等の「いつ(=when)」と答えるべき場面ですよね。
決して「大変申し訳ございませんが、弊社は明日、お休みを頂きます」と言った「理由(because)等」を説明する場面ではありません。
上記のような単純な質問だと、答えるべき(伝える)べきことを意識できると思いますが、案外専門用語に関する質問等だと、何故か「質問と回答のズレ」が起きてしまうことがあります(自戒の念も込めて)。
「伝えるべきこと」がわからない時
そもそも「何を伝えればよいのかわからない」ことがあります。その時は、まず「伝えるべきことは何か」ということを把握(しようと努力)する必要がありますよね。
例えば、クライアント自体が「自分自身でも何を知りたい状態なのかわからない」ということが多々あります。このような時は、相手の疑問自体をこちらから引き出します。
この記事では端折りますが、質問の仕方には「オープン・クローズドクエスチョン」があります。このようなことを意識しつつ、ニーズを汲み取ります。
やっとの思いで、「この人は〇〇について知りたいのではないか?」といった回答の方向性(或いは、この時点で端的に回答する内容)を考えます。
その時、「過不足なく」を意識することをおすすめします。単に「過不足なく」では、意味不明だと思いますので、解説します。
「過不足」とは、読んで字の如く「量が多いことと足りないこと」を意味するわけですが、この状態をなくそうということです。要は、「ドンピシャ」に言いましょう、ということです(身も蓋もない……)。
「いやいや、そんなことはわかるよ!」という声が聞こえてきそうです。笑
ではどのようにするのか、それは……「言わなくてもいいこと(話すべきではないこと、伝えないこと)」を考える(決める)ことです。
「伝えるべきことは何か」というのは非常に厄介な問いです。一方で、「伝えなくてもよい(伝えるべきではない)内容は何か」というのは、ある程度方向性が掴めるのではないでしょうか。
例えば、あなたが家庭教師として、中学生に球の体積の求め方を教えているとします。この時に、多くの方は、微積の知識を使った体積の求め方(証明)を「はじめに」教えたりはしないでしょう(発展的内容を教えるな、と言っているわけでは決してありません)。例えば、まずは式を使った計算問題等の初歩的な内容に取り組んでもらうことで、公式に慣れてもらうと思います。
上記のように、「はじめの時点で」微積の知識は説明してしなくてもよい、という方向性は立てることができますよね。このように、「必要のない情報は省いて行こう」というのが趣旨となります。
そして、「伝えなくてもよい(必要のない情報)」と判断した事項については度外視していきます。つまり、要らないものを全て捨てていき、残った所を説明(回答)するという方針となります。
(必要な時になって、度外視した内容を付け足せばよいと考えます)
まとめると、まずはクライアントの求めているものをさぐる→方向性がわからない場合はこちらからある程度質問・疑問に誘導する(例えば、オープン・クローズドクエスチョン)→過不足なく伝える
僕は、上記を繰り返すことで、クライアントの隠れた疑問等をあぶり出す、という方法をとっています。
相手に合わせる
ここで述べる「相手に合わせる」方がよい、という点は、相手の顔色を伺うとか、そういう(くだらない)意味ではありません。
クライアントの知っている言葉で説明するなど、クライアントのレベル(どう表現すれば良いのか判然としません。「能力」の方がしっくりくるのでしょうか)に適した方法で、クライアントごとに変えていくことです。
例えば、クライアントが経営層の方々だったら、彼らの好きそうな言い回しや彼らとの会話で彼らが使用している言葉を使って説明する、などです。決して、脈絡もなく比喩表現(例えば、野球に例えるだとか)を使った方がいいとか、そういうことではありません。
要するに、相手のわかる(よく使う)語彙を使って説明することです(もちろん、相手が「野球好きであることを知っている」、相手から「野球に例えると〇〇ですか?」という方向性(ふり)があったのでしたら、気にしなくて良いのですが……)。
なお、注意点は、相手がよく使う言葉だからといって、感覚的に真似て用語を使わないことです(しったかは、やめましょう笑)。認識相違が生じる可能性が高く、おそらくややこしくなります。そのため、クライアントの言語を理解したい(使いたい)のでしたら、素直に伺いましょう(「〇〇はどのような意味でおっしゃっていられますか?」等)
「正しさ」を取るべき場合
「正しさ」を取るべき場合は、クライアントにとっての「デメリット」=「リスク」を説明する時だと僕は考えます。
例えば、クライアントの事業が、侵害等の法的リスクを顕著に孕んでいる場合が挙げられます。
この時は、専門用語を正しく(厳密に)用いて説明する必要があります。
つまり、「正しく説明すること」で「クライアントと法的対応との認識相違をゼロに近づけること」になりますよね。
上記のように、クライアントにとってデメリットが生じる回答(今後の経営を変えてしまうほどのネガティブな情報)の場合は、専門用語を用いて、正しく伝えるべきだと思います。
そうでないと、多少時間はかかっても後々「言った」「言わない」等のくだらない時間で責任の押し付け合いとなり、非効率になると考えます(電話ならば録音する等、対策を行なっているかもしれませんが……)。
一方で、「メリット」を強調したいときにも、「厳密性」を用いることは少なからずありますが、個人的には、どちらかと言えば少ない気がします。
例えば、どうしても「専門性をアピールする必要がある」等、「理解していもらう努力」とは別の理由がある場合は使用します。
が、一般的にはポジティブな情報であるため、そこに認識相違(例えば、享受できる利益そのものを小さく見積もる等)が起こっても、大きな不利益につながることは少ない気がします。
「分かりやすさ」を取るべき場合
クライアントと話者との間で致命的な知識レベルの乖離を有する時、クライアントが論理よりも感情で価値判断する時は、「分かりやすさ」を取るべきだと個人的に考えます。
例えば、意味のわからない言葉で説明されるとイライラするという人は存在します。そのような人たちと接する場合、運悪く諦めましょう……というのは冗談です。
が、対応をしたくないというのは本音のところありますよね。
上記のような感情に支配されやすい方に対しては、こちら側のロジックは通用しません。そのため、「分かりやすい」という点のみにフォーカスします。
また、知識(教養)レベルに致命的な乖離があると、会話が噛み合わないことがあります。実際、日々クライアントと接する中で、考えるくせ(ググるくせ)等の最低限の自己解決能力等のない方は、非効率なやり取りが多いです(守秘義務のため、ボカします)。そのため、こちら側から歩み寄り、「分かりやすさ」を取る以外に話が先に進まないという場面に遭遇します。
なお、ここでいう「分かりやすい」とは、「語彙力」のことだけでなく、「短くストレート」に話す、「重要なことは間を置いて表現を少し変えて繰り返し主張する」と言ったような工夫も含みます。
まとめると、「分かりやすさ」を取る場合は、こちらから歩み寄る以外に選択肢がない場合です。その際、相手に伝わることを重要視することで、こちら側の都合(業界用語、専門用語)は押し付けないようにしています。
補足1:感情的な(或いは知識レベルが乖離する)人に対して、「厳密性」を取る場合について
僕の場合は、原則的に、伝え方自体を変えます。
例えば、口頭で理解してもらえない場合は、「一度メールにて、お送りいたします」等など、別の方法で説明を試みます。
或いは、自分だけでは解決できない可能性が高いため、第三者を介し(或いは第三者からのアドバイスをもらい)、説明を試みます。
同じ内容を説明するにしても、別人から説明を試みることで、すんなり理解してもらえることがあります。
なお、新入社員はメンター等(メンター制度がない場合は、先輩たち)を頼ることができると思いますので、ぜひ活用しましょう。正直、迷惑はかけてしまいますが、仕方ないです。なんたって、新入社員ですから。はじめから、何でもこなせる超人ではないのです。。。。。
補足2:話し方(聞き方)の「型」を身に付けることは重要。工夫することも大切
よく本などで「結論から話せ」「数字(統計)を使え」など、書かれていますが、そういう慣習は身につけた方がいいです……とありきたりな結論にはなります。
上記の事項はごもっともなのですが、例えば以下、僕なりの工夫です。
自分なりの説明をパターン(テンプレ)化する
クライアント接していると、ある程度つまずくポイント(理解が及ばない部分)がわかってきます。
そこで、そのポイントを説明するために、あらかじめ「この時は△△と言う」などを決めています。
例えば、「費用の内訳がよくわからないんだけど?」とクライアントから質問されたら、「大きく2つあります。一つは出願時点で必ず必要になる費用です。もう一つは、登録後に必要になる費用です」などです。
「費用の項目は2箇所存在する」ということを印象付けることを意識しています。
上記のように「〇〇ときたら、△△」と答えるということを、準備しています。そのようにすることで、その場で考える時間を短縮でき、あわてなくてすみます。
主語を明確にする
主語を明確にすることで、誰、何目線の主張(意見、考え)なのかを意識して伝えています。
例えば、「話者(例えば、僕自身)」「会社の総意」「(その場にいない)第三者」「判例等の(会話時点で変わることのない確定した)事実や情報」です。
「誰が」「何が」という点は、省略しない方がスムーズに会話を進めることができると、個人的には思います。
そのようにすることで、相手に無駄に考えさせないようにします。そして、質問に対するこちら側(話者)の内容を聞き取ってもらう(理解してもらう)ように心がけています。
出来るだけ話を遮らない
これは、話し方というよりも、クライアントとの接し方で気をつけていることです。
たとえば、こちら側から質問したら、クライアントが言い終わるまで待ちます。途中で話を遮らないようにしています。そのようにすることで、クライアントの思考を邪魔しないようにしています。
もちろん、心情的な配慮という意味もありますが、それ以上に「この人は、何を言っている(伝えようとしている)のだろうか」ということを僕自身が汲み取る時間を持つようにしています。
僕自身は、頭の回転がはやいわけではないため、テンパらないように、噛み砕くように話を聞くようにしています。
チェックリストを用意しておく
こちら側が伝えるべきことを忘れないための工夫となりますが、チェック項目を増やし過ぎないことをお勧めします。
相手は生身の人間です。そのため、一度に処理しきれないほどのチェック項目を設けて、一方的にお伝えても相手はすべてを処理しきれないです。つまり、最低限のチェック事項だけに絞り、言い忘れ防止に努めることをおすすめします。要はチェック項目を増やして、自分が言ったつもりでも相手に伝わらなかったら(理解してもらえないならば)意味ないのです。
チェックをすること自体が自己満足とならないように気を付けましょう。
おわりに
えらそうに書いてきましたが、僕自身、本当に顧客対応が苦痛でした。何度かクレームを頂き、そのような中で、もがいてきました。笑
正解はないと思いますが、顧客対応に悩まされてきた人や今も悩まされている人の少しでも参考になれば幸いです。
転職するので、これまでを振り返るという意味でもまとめました。