だいぶ前に読んだG.J.フレイザーの『金枝篇』の感想を書きます。単刀直入に言います。面白かったです。
・評価
フレイザーはフィールドワークをおこなっていないとのことですが(推理小説で言うところの安楽椅子探偵ですかね……。)、それを差し引いてもなお文献資料からの推論は、素晴らしいと思います。
・本の目的
この本の目的は、ミネ湖北岸の古代の森で、ダイアナ(ディアーナ)の祭司がいかにして継承されてきたのかを解明することです。ミネの聖所には、折ってはならない金枝の木があるが、しかし逃亡奴隷だけがその一本の枝を折ることが許されていたそうです。もし逃亡奴隷が折ることに成功すれば、祭司と闘う権利が与えられ、そして勝利すれば(殺せば)、「森の王」と呼ばれ、支配権を握ったそうです。
・感想的なもの
フレイザーは、この儀礼的に殺される祭司について、古代的な王権の原型と見なして、呪術的世界に共通することであると考えています。そこから、世界の樹木崇拝、魂、豊穣信仰、トーテミズム、タブー、スケープゴートを考察しています。博識すぎて憧れる(笑)。呪術から宗教への形態の変化というか変遷の過程が掴みやすいと僕は思いました。
学問的にいろいろ批判があるそうですが、不勉強のため批判はできません。僕にとっては好奇心を満足させた本であり、気に入りました。

- 作者: ジェイムズ・ジョージフレイザー,James George Frazer,吉川信
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 文庫
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